no.186
NEW TROLLS(ニュー・トロルス)ITALIA
ごきげんよう!
今回はイタリアから、ニュー・トロルスです。
ニュー・トロルスは、イタリアン・ロック草創期から
近年まで長きにわたり活躍したベテランバンド。
時代によりその音楽性を変化させながら
生き抜いてきたが、
ここ日本では’70年代のプログレッシブ・ロック期が
特に人気が高い。
結成は1966年頃で、バンドの創始者は
Vittorio de Scalzi(ヴィットリオ・デ・スカルツィ)
g,vo,key,flute
で、他に
Nico Di Palo(ニコ・ディ・パーロ)g,vo
Mauro Chiarugi(マウロ・チアルージ)key
Giorgio D’Adamo(ジョルジオ・ダダモ)b
Gianni Belleno(ジャンニ・ベッレーノ)ds
の5人でスタートした。
デビュー直後はビート・ロック・バンドだったが、
’70年代に入り、当時の流行りでもあった
プログレッシブ・ロックへと移行し、
数々の優れた作品を生み出す。
’80年代以降はポップ・ロック路線となり
(こちらが本来の姿、という意見も多い)、
分裂と再編を繰り返しながら、
資料によると2015年まで作品を発表していたようです。
私の所有するアルバムはいずれも
プログレッシブ・ロック期のものです。
ではご紹介していきましょう!
・Concerto grosso per i(1971/3rd/国内CD)
好き度★★★★☆
映画のサントラとして制作された。
ロックとクラシックを融合させたという意味で
金字塔的作品との評価が高い作品。
①~④については
映画音楽作家のルイス・エンリケス・バカロフが
作曲・アレンジしたバロック音楽風の曲を舞台に、
オーケストラとバンドが競演するという内容で、
格調高いストリングスに、
融合どころかぶち壊さんばかりのラウドな
バンド演奏が絡み、
他に類を見ない独特な作風となっている。
①~③は曲調があまりにも”いかにも”なので
若干アレな感じがしないでもないが、
それもトロルスの痛快な演奏とマッチしているのかも。
④はバンドのみの演奏で、”ジミ・ヘンドリックスに捧ぐ”
とあるように、それっぽいギターが聴ける。
⑤「Nella Sala Vuota」は、ここまでのコンセプトとは
無関係の、ハード・ロック的インプロビゼーションが
堪能できる長尺の曲。
とは言え延々とアドリブ合戦をするのでは無く、
いくつかの決まったテーマを順番に繰り出してくる感じで、
一部ヴォーカル・パートもある。
なお本作発表時はキーボード不在の4人編成になっており
キーボードは誰が弾いてるんだろ?
ヴィットリオ・デ・スカルツィさんかね?
・Searching For A Land(1972/4th/輸入CD)
好き度★★★★☆
ベースがFrank Laugelli(フランク・ロージェッリ)に交代、
さらにキーボードにMaurizio Salvi
(マウリツィオ・サルヴィ)が加入、
5人編成に戻っての4作目。
発表時はアナログ2枚組で、
1枚目がスタジオ録音、2枚目がライブ録音だった。
CDでは1枚にまとめられている。
スタジオ録音では、オーケストラこそ無いものの、
前作での経験を活かし、アコースティック楽器中心の
クラシカルな作風のプログレッシブ・ロックを展開。
曲の良さが染み渡る。
⑦「To Edith」は王道ロック的な曲で9分を超える大作だが、
実はたった一つのコード進行しか使用していない。
それでも飽きずに聴かせるのはさすが!
ライブ録音では一転してハード&ヘヴィな演奏で迫る。
ハード・ロックにややジャジーなテイストが加わるのも
このバンドの特徴だが、
それは次作でより顕著になる。
ラストの⑪「Lying Here」はフルート、コーラス、
そして荘厳なオルガンで始まり
スリリングなインプロビゼーションを経て
エンディングへなだれ込む17分を超える大作で
本作のハイライト的な曲。
なお、ほとんどの曲が英語で歌われている。
・UT(1972/5th/国内CD)
好き度★★★★★
一般的に最高傑作とされる事が多い。
しかしスカルツィと並ぶ看板プレイヤー、
ニコ・ディ・パーロ主導で作られており、
スカルツィは作曲に関わっておらず
ヴォーカルも取っていないという点で
評価が分かれる作品でもある。
でもまあ、そういった裏事情も知らずに素直に
作品に接してみれば、
曲も演奏もイイ。
ハード・ロックを基本に、クラシック、ジャズの
要素の混ざり具合もちょうどいい。
ギター・ソロが二人の会話のような
⑦「Paolo E Francesca(パオロとフランチェスカ)」、
叙情的なメロディとニコ・ディ・パーロの
アツ過ぎる超絶ハイトーン・ヴォーカルで
クライマックスを迎えるラストの名バラード
⑧「Chi Mi Puo Capire(誰が知るか)」
の余韻がたまらない!
・N.T. Atomic System(1973/6th/国内CD)
好き度★★★★★
かねてから、より完成度の高いプログレッシブな
作品作りを目指すスカルツィと、
ハード・ロック路線を推し進めたいパーロの
方向性の違いはあったが、やがて対立が激化。
パーロはスカルツィ以外のメンバーを
引き連れて出て行ってしまう。
残ったスカルツィは元ベーシストだった
ダダモを呼び戻し、それ以外のメンバーも一新。
その体制で作ったのが本作。
バンド名の使用をめぐって裁判となり、
一時的にニュー・トロルスを名乗れなかったのか、
N.T.との表記となっているが、
概ねどの資料でもトロルスの6作目として紹介されている。
内容はこれまでで最もプログレッシブな作風で、
分裂騒動の直後とは思えない楽曲の充実ぶり。
シンフォニック寄りの曲調だが、
あまり大仰になり過ぎず、
ジャジーな感覚が息づいているのがまたトロルスっぽい。
壮大なロック・バラードであり、
シンフォニックなプログレ大作の
③「Tornare A Credere」や
中間部がカッコイイ⑤「Ibernazione」、
哀愁たっぷりのメロディに暑苦しいヴォーカルの
⑥「Quando L’Erba Vestiva La Terra」、
伸びやかなフォーク・ロックのラスト
⑦「Butterfly」などなど名曲揃い!
本作はほとんどの曲がイタリア語で歌われている。
やっぱり言葉が違うと耳ざわりがだいぶ違うわ~
なお、出ていったパーロ組は連名で
ハード・ロック・アルバム『?』をリリース、
さらにそれがIBISへと発展する。
(IBISの回はこちら)
https://ameblo.jp/abcfriends-blog/entry-12778838820.html
・Concerto grosso no. 2(1976/7th/国内CD)
好き度★★★★☆
ルイス・エンリケス・バカロフと再び組んだ、
コンチェルト・グロッソのパート2。
仲違いしていたパーロ組もバンドにめでたく(?)復帰、
さらにギタリストを1人増やした編成となった。
続編とはいえ、前作からは5年が経っている。
’76年という時代性もあってか、
演奏、サウンド共に随分とモダンになっていて、
前作のような暴れた感じはなく、
整合感ある構築された作品と言った印象。
①~③がコンチェルト・グロッソのパート2で、
それ以降はオリジナルの小曲が並ぶが、
通しで聴いても全く違和感なく馴染む。
トロルスは本当に上手いバンドなので、
ハード・ロック寄りの演奏によるクラシカルな曲調、
見事なコーラスなどが堪能できる。
④「Quiet Seas」のような熱きバラードも健在だ。
以上です!
ではでは、
お付き合いいただきありがとうございました!
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