no.124
I POOH(イ・プー)ITALIA
どもー!
【I】はやたらとイタリアものが多いなーと思ったら、
[i]や[il]は英語における[the]のようなものらしい。
ならばそれは除いてこのイ・プーも【P】の項で
書くべきかも知れませんが、
大手レコード店でもほぼ【I】のコーナーに
置いてあるので、ご容赦を・・・
で、本題です。
イ・プーは1966年にデビュー、
2016年に活動停止するまで50年にわたって活躍した
イタリアの国民的ロック・バンド。
長い活動期間だけに、その時期によって
音楽性は様々なようですが、
大々的にオーケストラをフィーチャーした
’70年代初期~中期のアルバムが
特にプログレッシブ・ロックのフィールドで人気が高い。
私が持っているのもその時期のものです。
イ・プーの音楽を端的に表す言葉って何だろう?
と考えていたら、浮かんできたのは
『究極の美』というフレーズでした。
優美なオーケストラ・サウンド、
ゆったりとしたテンポにどこまでも美しいメロディが乗る。
大々的にオーケストラを導入してはいるが
大仰な感じでは無くむしろ素朴なイメージが漂う。
燦燦と降り注ぐ太陽光のなか、
おおらかに愛を歌い上げる・・・みたいな感じ?
イ・プーを聴いていて、
他に似たような曲調を持つバンドを聴いたことが無いな、
といつも思います。
まあ、自分が知らないだけなんでしょうけど。
イタリアには「ラブ・ロック」という、
甘美なラブ・バラードを得意とするジャンルがあるらしく
イ・プーもその代表格だということです。
非常に親しみやすい曲、メロディーであるにも関わらず
とても個性的なイ・プー。
私は4枚所有しています。
・Opera Prima(1971/4th/国内CD)
好き度★★★★☆
大手CBS傘下のレーベルに移籍し、
本作から大々的にオーケストラを導入して
独自の作風を確立したとされるアルバム。
ヒット曲も生まれ、大きな飛躍のきっかけとなった。
リリース時のメンバーは
・Roby Facchinetti(ロビー・ファキネッティ)key,vo
・Dodi Battaglia(ドディー・バターリア)g,vo
・Riccardo Fogli(リッカルド・フォッリ)vo,b
・Valerio Negrini(ヴァレリオ・ネグリーニ)ds
この時点で既にギターはオリジナル・メンバーでは無いです。
メイン・ソングライターはファキネッティ、
作詞はネグリーニ。
実は私の持っている4枚のうち、
最も後に聴いたのが本作です。
以降のアルバムからはドラマーが交代するんですが、
後任者に比べてヴァレリオのドラムは荒々しく、
また、ハードロック調の曲もあり、
演奏もラウドでちょっと意外な印象を受けました。
それでもオープニングの「Pensiero」での明るさ、
優美さはすでにイ・プー節といえる素晴らしい出来ばえ。
以降、この路線を突き詰めていく事になります。
・Alessandra(1972/5th/国内CD)
好き度★★★★☆
邦題『ミラノの映像』。
前述のとおり、ネグリーニは作詞に専念するため
ドラマーとしてはバンドから退き、後任に
Stefano D’Orazio(ステファノ・ドラツィオ)が加入。
この人、非常に特徴のあるドラマーでして、
とても優雅なグルーヴ感があり、
イ・プーの曲調にこれ以上ないくらいマッチしています。
ロック等のポピュラー音楽でのドラムのプレイは、
例えば4拍子のリズム・パターンでは1小節に
ハイハットを4回とか8回叩くかペダルを踏むなどして
刻むのが一般的ですが、
この人の場合、それがほとんど聞こえない。
実際、ハイハットを使用していないのか、
ミックスの段階でレベルを下げているのかは
判断ができませんが、たまにオープン/クローズ
している音は入ってはいます。
いずれにせよ、ゆったりとしたテンポの曲がほとんどの
イ・プーにあって、音数を減らして空間を増やす手法で
よりイ・プーの世界を独自のものへと進化させた
ドラツィオの貢献は大きいと思います。
前作ではまだバラエティーに富んでいた曲調も
本作ではより世界観が確立され、
「究極の美」が炸裂する好盤となりました。
・Parsifal(1973/6th/国内CD)
好き度★★★★☆
前作までメイン・ヴォーカル兼ベーシストだった
リッカルド・フォッリが脱退。後任ベーシストに
Red Canzian(レッド・カンツィアン)が加入、
ヴォーカルはファキネッティが取るようになった。
イケメンでアイドル的人気のあったフォッリの脱退は
相当な痛手だったようですが、
ファキネッティの多少メタリックな声質の
ヴォーカルでの頑張りもあって
前作と遜色のないアルバムを作り上げました。
前作でも見られましたが、
⑥「Come si fa」や
⑦「Infiniti noi(限りなき二人)」での、
エンディングでサビを繰り返しながら、
だんだんオーケストラの音の渦に
コーラスが消えていく手法がハマっています。
ラストの⑨「Parsifal」での壮大さは
まるで映画音楽のよう。
・Un po’ del nostro tempo miglione(1975/7th/国内CD)
好き度★★★★☆
邦題は『ロマン組曲』。
アルバムタイトルといい、オープニングのインスト曲
「Preludio(朝やけのプレリュード)」といい、
よくピッタリの邦題をつけたものだと思います。
セピア色のジャケットも秀逸!
ヴォーカルはドラツィオ以外の3人で担当。
音数の少ないドラマーのドラツィオですが、
よく聴くとどうやらツイン・バスドラムを
使用しているもよう。
画像検索してもあまり出てこないので確証はないけど
多分そう。
前作同様、壮大なスケールの
⑩「Il tempo, una donna, la città(ロマン組曲)」
でアルバムを締めくくる。
私事ですが、このアルバムが、
私が非英語圏ロックの扉を開けた最初の3枚のうちの
一つなのでした。
(あとの二つは、やはりイタリアのバンコ『最後の晩餐』と
フランスのアンジュ『新ノア記』)。
20代の半ばに差し掛かった頃でしょうか・・・
英語のロックとは違う「何か」を感じ、
新たなジャンルを開拓した!と喜びを覚えたものでした。
では今回はこのへんで。
お付き合いいただきありがとうございました!
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