114回
HUMBLE PIE(ハンブル・パイ)U.K.
こんにちは~
今回はハンブル・パイです!
ビッグネームですね~
ハンブル・パイをジャンルでくくるとするならば、
ハードロックという事でまあ一般的に
認知されていると思います。
ただ、ディープ・パープルやブラック・サバスのように
ド直球、ド真ん中のハードロックではなく、
例えばフリーのような、ハードロックという
大きなくくりの中の枝葉のような存在、
とでも言いましょうか。音楽的に。
結成は1969年。メンバーは
・Steve Marriott(スティーヴ・マリオット)g,vo,key
・Peter Frampton(ピーター・フランプトン)g,vo,key
・Greg Ridley(グレッグ・リドリー)b,vo
・Jerry Shirley(ジェリー・シャーリー)ds
の4人。
スティーヴ・マリオットは元スモール・フェイセス、
ピーター・フランプトンは元ザ・ハード、
グレッグ・リドリーは元スプーキー・トゥース。
それぞれが既に成功しているメンバーで構成された
“スーパーグループ”でした。
その音楽性は大きく分けて前期、後期に
分けることが出来ると思います。
マリオット、フランプトンの2大スターを擁し、
各メンバーのアイディアを均等に取り入れ、
バラエティー豊かな前期。
フランプトンが抜けマリオットが舵取りをするようになり、
黒人音楽へのリスペクトを前面に押し出しつつも
ハード&ヘヴィに徹した後期。
一般的には、後期の方が評価が高く、
実際に商業的成功も後期におさめています。
でも私は個人的には前期も好きだなあ~
捨てがたい魅力がありますよ(誰も捨ててないか)。
後期がいいのももちろんですが。
では所有アルバムです!
コンピレーション・アルバム
・The Best Of Humble Pie(1997/国内CD)
好き度★★★★★
このコーナーではずっと、
オリジナル・アルバム→コンピレーション・アルバム
という順で紹介してきました。
それを変えてコンピを先に持ってきたのには理由があります。
本作は、ベストと名付けられていますが
実際には彼らのイミディエイト・レーベル時代の2枚、
つまり1st「As Safe As Yesterday Is」と
2nd「Town And Country」からのほとんどの曲と、
シングル2曲からの選曲になっています。
1st、2ndから多くの曲が収録され、
選に漏れたのは各アルバムから2~3曲くらいでしょうか。
そのせいで、改めて1st、2ndを買うのに
二の足を踏み続けて約20年・・・
最初に買ったのがこのベストでした。
もっと全キャリアからまんべんなく選曲されてると
思ったのですが・・・(T_T)
恐らく、当時イミディエイトの権利を持っていた
日本のレコード会社が、
日本でのみ発売したものと思われ、現在は廃盤。
しかし、内容は素晴らしい!
この一枚でイミディエイト時代の彼らの
全貌がほぼ把握できる一枚。
初期であればあるほどバラエティ豊かで、
先述した通り民主主義的というか、
みんなのアイディアを平等に取り入れ、
ハードロックからブルース、フォーク、カントリーまで
幅広い楽曲をポップなセンスでまとめ上げている。
それは裏を返せばまとまりに欠ける、
方向性が定まらず散漫、などの低評価にも
繋がっていくわけですが、
そんなん吹き飛ばすくらい曲がいいので
私はすんなりと聴けちゃいます。
特に1stのタイトル・チューンである
④「As Safe As Yesterday Is」や、
ステッペン・ウルフのカヴァーである
⑪「Desperation」で聴かれるスケールの大きさ。
この辺が初期の基本路線なのかも。
演奏面で特徴的なのが、ハードロック・バンドでは珍しく
複数メンバーがリード・ヴォーカルを取る事。
マリオット、フランプトン、リドリーの3人が、
1曲の中でもパートごとにヴォーカルを分け合う
スタイルが目立つ。
声質が全員違うのですぐわかります。
ビートルズとか、アメリカのウエストコーストだと
複数メンバーがヴォーカルを取るスタイルが多いけど、
ハードロックだとパッと思いつくのはKISSくらいか。
それも1人が1曲を歌いきる事が多いので、
このハンブル・パイのスタイルは特異。
ヴォーカリストとしての力量は、
マリオットが抜きんでているのは一目瞭然だが、
パート分け、歌い切りのどちらも
3人の比率はほぼ均等。
また、ツイン・ギターのバンドでありながら、
ほぼオルガン・ロックでは?と思えるほど
オルガンの使用率が高い。
クレジットが無く、誰が弾いているのか不明だが・・・
バラエティに富んだハードロック・サウンドは
レッド・ツエッペリンを思わせる!
オリジナル・アルバム
・Humble Pie(1970/3rd/国内CD)
好き度★★★★☆
邦題は『大地と海の歌』。
イミディエイト・レコードが倒産したため、
A&Mに移籍してのサード・アルバム。
ここではまだ初期特有の、
メンバーの作品やヴォーカルを均等に取り入れた作風が
受け継がれています。
①「Live with Me」や③「One Eyed Trouser Snake Rumba」
など、メンバー共作ではマリオット、フランプトン、
リドリーの3人がヴォーカルを分け合うスタイル。
野太く、ドスの効いた声質のリドリー、
端正なルックスに似合わずワイルドな歌いっぷりの
フランプトン、
伸びやかなハイト-ン・シャウトやダイナミックな
ビブラート、ロック史上を見ても屈指の
歌唱力を誇るマリオット。
3人の全く異なるタイプの歌い手を擁するハンブル・パイ。
中でもマリオットの力量がずば抜けているのは
前述した通りですが、それでも均等割りに近い比率を
維持しているのは、バンドの発案者がそもそも
フランプトンだった事に配慮しての
結果なのかもしれません。
本作には、珍しいドラマーのシャーリー作の
②「Only a Roach」も収録されています。
カントリー風味の小曲ですが、ここでのヴォーカルは
上記の3人の誰でもないように聴こえる。
もしかして歌もシャーリーか?
クレジットが無く不明ですが。
全体的にハードロックあり、フォーク/カントリーありの
バラエティー路線なのは変わりないですが、
ここで注目したいのが
③「One Eyed Trouser Snake Rumba」、
⑤「I’m Ready」、⑦「Red Light Mama, Red Hot!」
といった楽曲。
後々、このようなミディテンポのブルージーで
ヘヴィーなハードロックを基本路線としていくので、
その青写真のようなものが既に出来ていたのかも。
・Rock On(1971/4th/国内CD)
好き度★★★★☆
ピーター・フランプトンが参加した
最後のスタジオ・アルバム。
アメリカでのアルバム・チャート最高位118位ではあるが
初のチャートインとなった。
前作で頭をもたげ始めていたソウルフル・ブルージー、
ハード&ヘヴィー路線がより明確になった事を、
④「Stone Cold Fever」⑤「Rollin’ Stone」で
実感できる。
相変わらずオルガンが活躍する①「Shine On」、
シンプルなギターと重たいドラムが
ツェッペリンを思わせる⑦「The Light」など、
フランプトン作品も健在だが、
何となく全体的な方向性が定まった印象を受けます。
ここでの変化が、次作であるライヴ・アルバム
『Performance Rockin’ The Fillmore』の大ヒット、
そして徐々に音楽的距離を感じていった
フランプトンの脱退へと繋がっていきます。
・Smokin'(1972/5th/国内CD)
好き度★★★★★
ライヴ・アルバム『Performance Rockin’ The Fillmore』
では、LP2枚組ながら収録曲はわずか7曲、
オリジナルは2曲のみ。
それ以外は長尺のブルースやR&Bのカヴァーという内容ながら
全米21位という、
バンド最高のヒットを記録。
ここで披露されたスタイルが今後バンドが進む道と
確定されたような作品でしたが、
そこに自分の居場所は無いと判断したフランプトンは
『Performance ~』のリリース時には既に脱退していました。
ギタリストとしての稀有な才能を持つフランプトンの脱退は
バンドにとって痛手でしたが、
元コラシアムのClem(Dave) Clempson(クレム・クレムソン)
を迎え、危機を乗り越えるどころか、
この『Smokin’』で全米6位と、過去最高のヒットを生む。
因みにフランプトンもその後ソロで大成功、
結果として袂を分かったことが両者にとって
正解だったのかも。
本作では『Performance ~』で明確にした
ハード&ヘヴィー路線をオリジナル楽曲に昇華。
フランプトンが去り、
リドリーのヴォーカル曲も減少、
リード・ヴォーカリスト=マリオットという図式が
明確になった。
マリオットの強力なヴォーカル+ブルース、R&Bベースの
ハード&ヘヴィー路線が見事に当たった、という事か。
フランプトンよりもブルージーで、かつ
テクニシャン・タイプのクレムソンとマリオットの
ツイン・ギター・スタイルも鮮烈な傑作!
⑨「Sweet Peace And Time」に
パイ流ハード・ロックが凝縮されています。
・Eat It(1973/6th/国内CD)
好き度★★★★☆
バンド初の2枚組(LP当時)オリジナル・アルバム。
’60~’70年代、数多くのバンドがその絶頂期に
2枚組アルバムを出しています。
溢れる創作意欲に1枚では足りないのか、
はたまた余裕なのかはわかりませんが、
ハンブル・パイも最大のヒットとなった前作に続いての
新作は2枚組。
CDでは1枚にまとめられています。
LP時代は、サイド1にハードなオリジナル曲、
サイド2にブルースやR&Bのカヴァー、
サイド3にアコースティックなオリジナル曲、
サイド4にはライブ音源が配置された。
結果として再びバラエティー豊かになったが、
面ごとにコンセプトが明確になっているため、
散漫な印象はありません。
レコーディングには三人組女性コーラス・グループ、
ブラックベリーズが全面参加、花を添えている。
私のお気に入りは⑨「Say No More」と
⑫「Beckton Dumps」。
⑨はアコースティック面のオープニングを飾る曲で、
わずか2分の小曲だが、
マリオットの弾くウクレレに哀愁漂う名曲。
⑫はやや軽めでユーモアも感じさせつつ、
これまたツェッペリンを思わせるダイナミックなロック。
スタジオ録音パートのエンディングを飾る役割も果たす。
サイド4は『Performance ~』との重複は無く、
現メンバーになってからのパフォーマンスを伝える。
前作までと比べてややギターの音が軽くなり、
エコーが深くなったのが気になると言えば気になる。
・Thunderbox(1974/7th/国内CD)
好き度★★★☆☆
ジャケット中央に鍵穴がくりぬかれ、
内ジャケの絵が覗き見できるという特殊ジャケット。
私のプラケースCDでも可能な限り再現されているのが
嬉しいところ。
昔の鍵穴って前方後円墳に似てるね。
脱線しました。内容の方に。
全12曲中半分以上がカヴァー曲。
タイトル曲①はパイ節ですが、
アルバム全体を通じて非常にファンキー要素が強いです。
前作まではファンク色はあまりなかったのに、
ここに来て急にその要素をグッと前面に出してきた。
そしてギターの音も軽い上、
ツイン・ギター的なサウンド・プロダクションも減った。
これはかなりな変化だと思うのですが・・・
けして悪くないけど、
前作までのとめどなく溢れる創作意欲みたいなものは
残念ながら感じられません。
いったんここまで前半とします。
ライヴ・アルバム、メンバーのソロ作などを
後半にて!
ではでは、
お付き合いいただきありがとうございました!
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