no.134
JETHRO TULL(ジェスロ・タル)U.K.
どもー!
今回は1968年デビュー、現在に至るまで
ロック史に名を刻むビッグネーム、ジェスロ・タルです。
主にプログレッシブ・ロックのフィールドで
語られる事が多いが、その音楽性は
ハードロック、フォーク/トラッド、ブルース、ジャズ等
様々な要素を持つ。
デビュー時のメンバーは
・Ian Anderson(イアン・アンダーソン)vo,flu,g
・Mick Abrahams(ミック・エイブラハムズ)g,vo
・Glenn Cornick(グレン・コーニック)b
・Clive Bunker(クライヴ・バンカー)ds
の4人。
バンドの中心人物は、何と言ってもリーダーにして
ヴォーカリストのイアン・アンダーソン。
バンドのほとんどの曲を作詞作曲し、
アルバムのコンセプトも手掛ける
(タルはコンセプト・アルバムが多いのが特徴)。
ヴォーカリストとしては音域はあまり広い方ではない
ように思えますが、低い声域ながら太くなり過ぎず、
ちょっとクールな声の存在感は絶大。
トレードマークでもあるフルートという管楽器を
大々的にロックにフィーチャーしたことも大きい。
片足を上げた一本足スタイルでフルートを吹くさまは、
ビジュアル面でも大きな効果を発揮する。
また、アコースティック・ギターの名手でもある。
1stアルバム『This Was(日曜日の印象)』では、
アンダーソンと共にギタリストのエイブラハムズの
影響力も強く、非常にブルース色の強い作品だった。
しかしエイブラハムズはよりブルースを極めるため
1st限りで脱退。
完全にアンダーソンが主導権を握り、
ジェスロ・タルはアンダーソンのアイデアを
具現化するための芸達者な職人集団、
といった雰囲気になってきます。
どのメンバーも非常に上手いが決して出すぎる事なく、
かと言ってバック・バンドに徹するというのでもない、
総合力で一体となっっているのが強みでしょう。
では所有アルバムを紹介して行きましょう!
オリジナル・アルバム
・Stand Up(1969/2nd/国内CD)
好き度★★★★★
初代ギタリスト、エイブラハムズが1st限りで脱退後、
バンドに迎えられたのは
Martin Barre(マーティン・バー)。
※長らく”バレ”と表記されていたが”バー”の方が
正しい発音に近いもよう。
以後、長きにわたってアンダーソンの右腕的存在となる。
そのプレイスタイルから、
かなりハードロック的な印象を受ける
ギタリストが加入したタルですが、
アルバムの印象はまだかなりブルース、ジャズ色が濃い。
バッハの曲をアレンジし、フルートをメインに据えた
インスト・ナンバー③「Bouree」が印象的。
また⑦「Fat Man」など、元々アンダーソンが
持っていたであろうフォーク/トラッド的な感覚も
随所で見られる。
比較的短い曲が10曲並ぶ本作は、
それぞれがやや地味に感じられるかも知れませんが、
いかにもイギリスっぽい歌心溢れる良作揃い。
噛めば嚙むほど味が出るタイプのアルバムです。
特に王道系ロックの⑧「We Used to Know」、
ストリングスをフィーチャーした
牧歌系アコースティック・プログレとでも言える
⑨「Reasons for Waiting」、
激しくジャジーな演奏がたまらないラスト、
⑩「For a Thousand Mothers」と畳み掛ける
終盤の展開は見事!
ちなみに、私の所有するタルのアルバムは
4作目『Aqualung』以外は全て2003年に
リマスターされたヴァージョンで、それぞれに
ボーナストラックと、イアン・アンダーソン本人の
コメントが添えられています。
当時を振り返っての本人の言葉はやはり興味深い。
・Benefit(1970/3rd/国内CD)
好き度★★★★☆
基本的には前作の延長線上にあるアルバム。
ブルース、ハードロック、プログレ等の
エッセンスを凝縮し、なおかつ
アンダーソンの”声”の魅力を最大限に活かした
①「With You There to Help Me」が素晴らしい!
オープニングを飾るにふさわしい名曲です。
・Aqualung(1971/4th/国内CD)
好き度★★★★★
名作との呼び声高い4作目。
全米アルバムチャート7位を記録。
次作『Thick as a Brick(ジェラルドの汚れなき世界)』(’72)、
さらにその次『A Passion Play』(’73)で
2作連続で全米1位を獲得していて、
この時代が売り上げ的にはピークでした。
その中で本作を最高傑作とする向きも多い。
プログレ、ハードロック、フォーク等の要素が
絶妙のブレンド具合で展開されるタル・サウンドの
真骨頂が十二分に味わえるアルバムです。
前作を最後に脱退したベーシスト、
グレン・コーニックに代わり
Jeffrey Hammond(ジェフリー・ハモンド)が加入、
さらに前作でもゲスト参加していたキーボードの
John Evan(ジョン・エヴァン)も加わり5人組となった。
・War Child(1974/7th/国内CD)
好き度★★★★☆
『Thick as a Brick』、『A Passion Play』の
2枚の全米No.1アルバムは共に組曲形式の
全1曲のみ収録という大作主義の作品でしたが、
ここではコンパクトな楽曲が10曲並ぶ。
なんだか不思議なコード進行やリフが多い点で
『Aqualung』との共通点もありますが
ストリングスをかなりフィーチャー。
エヴァンの弾くアコーディオンも印象的。
ドラマーは’71年にクライヴ・バンカーに代わって加入の
Barriemore Barlow(バリモア・バーロウ)。
全米アルバムチャート2位を記録。
・Minstrel in the Gallery(1975/8th/国内CD)
好き度★★★★★
邦題は『天井桟敷の吟遊詩人』。
個人的に大好きなアルバムです。
中世風の表ジャケット、裏ジャケには
現代の天井桟敷に佇むタルのメンバーを配した
デザインも秀逸。
タイトル曲の①冒頭でのアコースティック・パートが
たまらなくイイ。
その静寂を切り裂くように入ってくるバーのギターと
バーロウのヘヴィ・メタリックなプレイで曲は
ハード・プログレへと展開。
フルートも交えてタル節になっていく名曲!
8分を超える①、そして16分を超える
⑥「Baker St. Muse(ベイカー・ストリートの女神)」と、
やや大作志向への揺り戻し?が見られる。
非常にアコースティック色が強いアルバムだが、
ヘヴィなエレクトリック・パート、
またストリングスとのバランスもよく取れた好作品!
・Too Old to Rock ‘n’ Roll: Too Young to Die!
(1976/9th/国内CD)
好き度★★★★☆
邦題は
『ロックンロールにゃ老だけど死ぬにはチョイと若すぎる』。
“老”は”とし”と読むらしいです。
なかなかイキな邦題ですね。
アメコミ調のジャケット、さらに内ジャケには
本作の世界観を表す漫画が描かれているが、
必ずしも歌詞の内容と一致はしていない。
コンパクトな10曲のなかで、レイ・トーマスという
架空の元スターの凋落と復活の物語が紡がれる
ロック・オペラ。
この物語がアンダーソンの自伝かのように
捉えられる事が多いが、アンダーソンはこれを否定。
また同名のムーディー・ブルースのメンバーとも
無関係みたいです。
ベーシスト、ジェフリー・ハモンドは本来目指していた
画家になるため音楽界から引退、
代わって元カルメン(当ブログno.51、
https://ameblo.jp/abcfriends-blog/entry-12652571344.html)
のJohn Glascock(ジョン・グラスコック)が迎えられた。
ここまで聴いてて、時々デヴィッド・ボウイっぽいな、
と思う事があります。
・・・それだけなんですけど。
・Songs from the Wood(1977/10th/国内CD)
好き度★★★★☆
邦題は『神秘の森〜ピブロック組曲』。
アコースティック色の強いアルバム。
もともとアコースティック・サウンドは
初期の頃からの要素のひとつではあったが、
ここでは特にトラッド風味が増しているし、
どことなく中世音楽のような格調高い雰囲気も
漂っています。
そういった面と、ロックな面とのバランスも
非常にいいナイスなアルバムです。
なお本作より、これまでのアルバムでも
オーケストラ・アレンジ等を担当していた
David Palmer(デヴィッド・パーマー)が
キーボーディストとして加入、タルは6人編成となった。
・Heavy Horses(1978/11th/国内CD)
好き度★★★★☆
前作同様、アコースティック色が強い。
前作と本作、そして次作『Stormwatch』の3枚で
「フォークロック三部作」とも言われているそうです。
概ね前作の流れをくむ作風で
出来栄えもさすがだが、
ボーナストラックとして追加収録された
⑩「Living In These Hard Times」
⑪「Broadford Bazaar」
がまた秀逸で、何故リリース当時アルバムから
漏れたのかが不思議なほど。
ところで、記念すべき1stと、2枚の全米No.1アルバムを
所有していませんが、それらは妻が持っており、
家にはあるのであえて買いませんでした。
結婚後は、ダブらないように買い物しているのです(笑)
ライヴ・アルバム
・Bursting Out(1978/国内CD)
好き度★★★★☆
バンド初のフル・ライヴ・アルバム。
これまで編集盤に数曲ライヴ・ヴァージョンが
収録されたことはあったが、フルサイズでは初めて。
それも2枚組の大ボリュームで届けられた。
スター・プレイヤーなき技術者集団、
ジェスロ・タルのうまさ、魅力がたっぷりと堪能できる。
このバンドの場合、スター・プレイヤーは
イアン・アンダーソンでしょう。
私も、1993年と2005年に来日した際には
ライヴを観に行きました。
いずれも素晴らしいステージでした。
2013年の、イアン・アンダーソンのソロでの
ライヴも行っています。
その時点での最新作が、次に紹介するアルバムです。
メンバー関連作
Ian Anderson
・Thick as a Brick 2(2012/5th/国内CD)
好き度★★★★☆
バンド活動停止中のためソロ名義でリリースされた
『Thick as a Brick(ジェラルドの汚れなき世界)』
約40年ぶりの続編。
ソロ名義ではあるが、どこをどう切っても
タル/アンダーソン節の好作品!
新聞記事風のジャケットも、
時代を反映してWEBサイトのURLらしきものが見られるなど
進化しています。
続く2014年には第3弾も発売された。
コロナ・パンデミック後の2022年には
ジェスロ・タル名義として18年ぶりのアルバム
『The Zealot Gene』を発売しカムバック、
なんと僅か1年3ヶ月後の今年4月には最新作
『RokFlote』を発売したばかり。
現在75歳にしてますます盛んなイアン・アンダーソン、
頼もしい限りです!
以上です!
ではでは、
お付き合いいただきありがとうございました!
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