こんにちは!
今回は・・・まあ普通はご存知ないでしょうね。

ACQUA FRAGILE(アクア・フラジーレ) ITALIA

かつて(今もそう変わらないと思うが)、
日本のレコード会社による洋楽(ロック・ポップス)
の配給状況というものは、そのほとんどが
アメリカ、イギリスに偏っていて、
あとはカナダ・オーストラリア等の、
いずれにしても英語圏のものが
そのほとんどを占めていました。
それはやはり、英米のヒットチャート上位のものが
この日本でも売れるだろうという考えなのでしょうし、
音楽という文化を扱いながらも
会社である以上、利益が見込めそうなものから
出していく、という方針になるのは仕方ありません。

それでもキングレコードを筆頭に、
日本フォノグラム、ポリドール等からある程度、
英語圏以外のロック作品がリリースされていました。

時は’90年代初頭、20代前半の私は
プログレッシブ・ロックが大好きで、とりあえず
イエス、ピンク・フロイド、EL&P等のビッグネームを
何枚か聴き終え、資料本なども読むうちに
イタリア、フランス等英語圏以外でも
’70年代にはプログレが隆盛だったと知ります。
(ていうか日本で紹介されるほとんどのヨーロッパのロック
=プログレという図式が出来上がっていたように感じます)

そんな折、アナログレコードに替わって登場したCDが
一通り基本的なところを出し終わると、
今度はマニアックなものまで復刻や
日本初CD化と銘打って出始めます。
これは私にとって時期的に非常にラッキーでした。
数年前までは輸入盤専門店でたまたま入荷した時
でないと買えなかったような希少盤が、
いとも簡単に普通のレコード店で買えるんですから。
押し寄せるCD化の波の、最も恩恵を受けたのが
B級プログレだとはよく言われています。

そんな頃に出会ったのがこのACQUA FRAGILEです。
ただでさえ一般的にはマイナーな
イタリアン・ロックの中でも、
さらにマイナーな部類に入ると思います。
では何を頼りにこのバンドのアルバムを買ったかというと、
PFMという数あるイタリアン・ロックの中で最もアメリカで
成功したバンドの弟分的なバンドであり、後に
vo.のBernardo LanzettiがPFMに加入する事になるという
資料で得た情報だけです。

しかし、ヨーロピアン・ロックに手を出し始めたこの頃、
一体どんなサウンドなのかもわからず、
他のCDのライナーノーツ、本や文献等からの情報だけを頼りに
買って来たCDをワクワクしながら聴くのは
凄く楽しかったな・・・(遠い目をする)

ではアルバムの紹介です。
・ACQUA FRAGILE(1973/1st/国内CD)
好き度★★★★

さて肝心の音の方ですが、聴いてすぐに感じたのが
「GENESISっぽい!」でした。
なんせ、Bernardo Lanzettiのヴォーカルが
Peter Gabrielに似ている。
Peterの特徴的なところをデフォルメしたような感じなので
全てにおいてそっくりというわけではないんですが、
細かく声を震わせるような歌い方なんて特に似ています。
ギターもSteve Hackettっぽいし、
曲も大仰なエンディングがあったりと、
「きっと大好きなんだろうなー」と思わせます。

歌詞は母国語でなく、全曲Bernardoによる英語詩。
サウンドがGENESIS志向なので当然の選択だったのか?
そのせいか、イタリア色は希薄です。

しかし「GENESISっぽいね」で片付けてしまうのは勿体ない!
作曲、アレンジ、演奏能力はかなり高いと私は思います。
①「Morning Comes(夜明けの訪れ)」はモロGENESIS。
リリカルな導入部から徐々に盛り上げ、
曲中に全く別の激しい展開をはさみ、主題に戻って
最後は仰々しくエンディングを迎えるという黄金パターン。
ここまで似せられればそれはそれで大したもの。
別に似てたって、出来た曲が良ければ構わないんじゃないか、
と思わせるような傑作です。
ラストの⑦「Three Hands Man(三本の腕を持った男の物語)」
も同系統の曲。④「Song From a Picture(絵画のメッセージ)」
や⑥「Going Out(脱出)」なんかはGENESISの
『NURSERY CRYME』『FOXTROT』あたりに入っている小曲のよう。

しかし③「Science Fiction Suite(S.F.組曲)」では
アコースティックギターのストロークにCSN&Yばりの
ヴォーカル・ハーモニーを乗せて、
これがまたなかなか聴かせるのです。
タイトルが示すように短いモチーフをいくつか繋げた構成ですが
テンポが統一されているので一気に聴けます。
このハーモニーを多用するところが本家との違いか。
強力なヴォーカリスト、Bernardo以外にも
かなり歌えるメンバーがいるようです。
②「Comic Strips」のAメロのヴォーカルは
Bernardoとは別人のように思います。

こんな感じでプログレ好き、GENESIS好きなら楽しめるかも。
或いは、ただのまねっこと感じてしまうか・・・?

・MASS MEDIA STARS(1974/2nd/国内CD)

好き度★★★★

セカンドにして最後のアルバム。
これをリリースした後、vo.のBernardo Lanzettiが
PFMに引き抜かれたことでバンドの歴史は終わってしまいます。
相変わらずvo.はPeter Gabrielっぽく、
g.はSteve Hackettっぽいプログレ曲が並ぶが
曲調としてはGENESISの影響からは
かなり脱却しているように感じます。
①「Cosmic Mind Affair」などはその典型。
一方、②「Bar Gazing」はまたモロのGENESIS!
しかしBernardoのvoは素晴らしい!
その特徴と存在感は前作よりUPしています。
③「Mass Media Stars」もまだ少しGENESISっぽいが
得意のハーモニーを駆使し、少々コミカルな面も見せる。
④「Opening Act」⑤「Professor」あたりは非常にポップ。
ラストを飾る抒情的な⑥「Coffee Song」でも
Bernardoの素晴らしい歌唱が聴ける。

アルバム全体の印象としては1stよりはGENESIS色は後退し、

音像もタイトで分離の良い力強いものになっています
(1stも分離は良く、クリアな音です)。

それにしてもBernardoのPFM加入により
バンドの終焉を迎えたACQUA FRAGILE。
Bernardoを迎えたPFMのアルバム
「Chocolate Kings」は名作ですが、
結局彼は僅かな期間しかPFMに在籍しませんでした。
もし引き抜きがなく、ACQUA FRAGILEがもっと長く
活動していたらどんな良作を生み出しただろう?
と考えると非常に惜しい!

日本盤『MASS MEDIA STARS』のライナーノーツによれば、
バンドメンバーは
dr.Piero Canavera
g.Gino Campanini
vo,g.Bernardo Lanzetti
b.Franz Dondi
key.Maurizio Mori
の5人。
作曲は全てdr.のPieroによるもの。
これほど高い作曲、アレンジ、演奏能力がありながら
Bernardo以外のメンバーは
その後の消息がわかっていないそうです。
もったいないですね~

その短い期間中、売れたという話は聞かないACQUA FRAGILE。
その作品は遠い日本で陽の目を見、
現在も国内盤CDが発売されています。
 

ネットで調べたら、再結成されて2017年には
43年ぶりの新作が出たとの事。すごい!
生きてるって素晴らしい!
 
またいっぱい書いちゃったアセアセ
ではまた!ありがとうございました。

ABC友の会公式HP

http://abc-tomonokai.com/

 

ABC友の会公式Twitter

https://twitter.com/abc_tomonokai
おざきゆうすけン家の棚no.4 ACQUA FRAGILE

投稿ナビゲーション