no.197

PENTANGLE(ペンタングル)U.K.

お久しぶりです!
ごきげんいかが?

今回はペンタングルを紹介します。

1968年デビューのペンタングルは、
ロック/ポップス史上、
非常に重要な位置を占めるバンドとして
現在まで語り継がれています。

どう重要なのか?
それは、ジャズ/ブルースをベースに、
イギリスのトラディショナル・フォーク(トラッド)を
大幅に取り入れ、
単なるスタイルの踏襲の数歩先を行く、
それまで誰もやっていなかった
新しい音楽を創造した、というところでしょう。

とまあ書いてはみましたが、
私はアルバムのライナーなど文献を読んだから
そう書けるわけで、
ペンタングル登場の衝撃を肌で感じた世代ではありません。
しかし後追いで聴いても、
そのオリジナリティと技術の高さが
非常に高いレベルで結実しているさまは
十二分に感じることができます。

ペンタングル・サウンドの特徴は、
2本のアコースティックギター、
ダブル・ベース(ウッドベース、コントラバスとも言う)、
にドラムと、
アコースティック楽器のみで構成されている点。

つまり、非常にアタックが強く、
サステイン(持続音)がほとんど無い
隙間の多い音空間の中で
メンバー5人が均等に力を発揮、
度々ジャケットなどにも使われる五芒星のごとく
均整が取れているが
少しでもバランスを崩せば全て崩壊してしまいそうな
スリリングな世界が展開される。

アコースティック楽器といえば一般的には
穏やかとか、癒しの、といったイメージが強いが
ペンタングルにおいてはその限りではない。
持続音を出せるのはヴォーカルのみ。

とは言え、このスタイルは3作目までで、
4作目からはエレキギターやコンサーティナ
(アコーディオン系の楽器)などを導入、
緊張感を緩和したサウンドへと移行している。

メンバーは
・Jacqui McShee(ジャッキー・マクシー)vo
・Bert Jansch(バート・ヤンシュ)g,vo
・John Renbourn(ジョン・レンボーン)g,vo
・Danny Thompson(ダニー・トンプソン)b
・Terry Cox(テリー・コックス)ds,vo
の5人。
バート、ジョンはそれぞれギタリスト、
シンガーソングライターとして既に名声を得ていた。
紅一点のジャッキーはフォーク畑、
ダニーとテリーのリズム隊はジャズ畑出身で
数多くのセッションに参加もしていた
という顔ぶれ。

デビューから’73年の解散まで一度も
メンバー・チェンジが無かった。

その間、6枚のオリジナル・アルバムを発表していますが
私は全て持っています。
では紹介していきましょう!

・The Pentangle(1968/1st/国内CD)

好き度★★★★★
記念すべきファースト・アルバム。
前述したように異常なまでの緊張感ある演奏が
④「Pentangling」、⑧「Waltz」といった
オリジナル曲で堪能できる。

その他のトラディショナル・ソングをはじめとする
カヴァー曲との均整もお見事。

私の持っているCDは初リリース時と同じ内容だが
2010年のリマスター版では多くの
ボーナストラックが追加。
これらの楽曲がまたイイのよ…
欲しくなっちゃいました(笑)

メンバー5人のシルエットと、
ポップなフォントを使ったバンド・ロゴだけの
ジャケットもカッコイイ!

なおプロデュースを担当したのは
ザ・フー、キンクス等を手掛けたシェル・タルミー。
以後3作目までこの体制が続く。

・Sweet Child(1968/2nd/国内CD)

好き度★★★★
2作目にして2枚組の大作。
disc-1は同年のロイヤル・フェスティバル・ホールでの
ライブ録音、
disc-2にはスタジオ録音が収録されている。

disc-1①「Market Song」や2-①「Sweet Child」
は彼らがソングライターとしても
非常に優れている事をよく表している。

disc-1のライブ録音は他のスタジオ録音と
聴き比べてもあまり印象に違いが無い。
バンドの再現能力の高さもあるし、
恐らくスタジオ録音においても
極力オーバーダビングは少なくしているのでしょう。

ただ若干アコギの音が丸く、
一瞬エレキギターに聴こえる場面があるが、
disc-2では前作同様、
エッジの立ったシャープなアコースティック・サウンドが
楽しめる。

2-⑨「Moon Dog」は、珍しいドラマーの
テリー・コックスによるヴォーカルが聴ける。

・Basket of Light(1969/3rd/国内CD)

好き度★★★★★
一般的に彼らの最高傑作とされ、
最も商業的にも成功したアルバム。

彼らの持つ特異性、緊張感とポップ・センスが
見事に融合したオープニング曲
①「Light Flight」にとにかく耳を奪われる。
イギリスBBC放送のテレビドラマの主題歌にもなった名曲!

⑤「Train Song」、⑥「Hunting Song」
といったオリジナル曲の素晴らしさも光る。
一方、トラッドをはじめカヴァー曲も充実。
ラストの⑨「House Carpenter」の
シタール、バンジョーを使ったアレンジもgood!

・Cruel Sister(1970/4th/国内CD)

好き度★★★★★
前作までと一変、全曲トラッドのカヴァーが占め、
ジョン・レンボーンのエレキギターが導入された。

プロデュースは前作までのシェル・タルミーに代わり
フォーク畑のビル・リーダーが担当。

音楽的にも一般的なフォーク・ロックに寄った、
との評価が多いし、実際そのようにも感じます。
しかしだからといってそれはペンタングルの
評価を下げるとか、そういったことは一切無い。

いかにも、なトラッド・ソングの
①「A Maid That’s Deep in Love(恋する女)」、
哀愁あふれる③「Lord Franklin」の素晴らしさ。
エレキギターやコンサーティナといった
持続音が出る楽器を使い、
いくぶんリラックスした雰囲気も感じられるが、
依然として高い意識のもとアレンジされているのでしょう。

そんなペンタングル魂が、18分に及ぶ大作
⑤「Jack Orion」で十分に堪能できる。
曲が進むにつれ自在に姿を変えていく様は圧巻!

・Reflection(1971/5th/国内CD)

好き度★★★★★
私にとってはペンタングル原体験となったアルバム。
予備知識がほとんどないから
たまたま最初に見つけたものを購入したに過ぎませんが、
しかし①「Wedding Dress」のアコギ、バンジョー、
弓を使ったダブルベースの素晴らしいアレンジに
圧倒されました。

それと初めてアメリカのトラッド・ソングをカヴァーした
③「Will the Circle Be Unbroken」、
⑤「Rain and Snow」が特に強く印象に残った。

上記の曲はいずれもカヴァーだが、
2作品ぶりに収録されたオリジナル曲も
ジャズ・テイストに溢れ見事に溶け込んでいて、
全体の印象としてはやや前々作までのものに
戻ったようにも感じる。

・Solomon’s Seal(1972/6th/国内CD)

好き度★★★★★
邦題は『ソロモンの封印』。
6作目にして最終作。
ここまでただ一人のゲスト・ミュージシャンも無く、
メンバー5人だけで全アルバムをレコーディングした。

リリース時の評価は全作品中最も低かったようだが、
私個人的には聴きやすさではピカイチではないかと思う。

使用楽器の数が増え、ということは
オーバーダビングも多用したのでしょう。
以前のような緊張感あふれるとんがったサウンドでは
なくなったかも知れないが、
トラッド・ソング、オリジナルともに
曲のクォリティはむしろ上がっているのでは。

オープニングの①「Sally Free And Easy」での
まるでトリプルギターのようなベース、
意表を突くディストーションの効いたエレキギター、
楽器のようなジャッキー・マクシーの声の使い方など
珠玉のアレンジだ。

私としてはこのアルバムを買ったのはつい最近なので
聴き込みが足りないのだが
「こんなに良かったんだ」と再認識した次第です。

6作目も素晴らしい内容にもかかわらず、
すでに分裂しかかっていたバンドは翌’73年に解散。
’80年代に入り再結成を果たしてアルバムもリリースするが
2011年にバート・ヤンシュが、
’15年にはジョン・レンボーンが亡くなった。

現在は唯一のオリジナル・メンバーとなった
ジャッキー・マクシーがバンド名を受け継ぎ、
ジャッキー・マクシーズ・ペンタングルとして
今も存続している様子。

ではでは、
お付き合いいただきありがとうございました!

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おざきゆうすけン家の棚no.197 PENTANGLE

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